停電したら会社は何時間もつ?
企業が備えるべき非常用電源
「もし今、会社が停電したら、何時間業務を続けられるだろう?」
そう聞かれて、すぐに答えられる企業は多くないかもしれません。
パソコンやサーバー、Wi-Fi、電話、照明、空調など、現代のオフィスは電気がなければ業務を継続することが難しくなっています。特に地震や台風、大雨などの災害による停電では、復旧までに時間がかかる可能性があります。
企業のBCP(事業継続計画)では「停電したらどうするか」を事前に決めておくことが重要です。内閣府も、BCPにおいて重要業務を中断させない、あるいは中断した場合でも可能な限り短期間で再開するための対策が重要だとしています。
では、企業は何時間分の電力を確保しておけばよいのでしょうか。
この記事では、企業が停電に備えて考えておきたい「非常用電源」の種類や必要時間、選び方について解説します。
目次
1 停電したら会社は何時間もつ?
まず確認したいのが「停電した場合、現在のオフィスが何時間業務を継続できるのか」ということです。
実は、非常用電源を用意していない企業の場合、停電した瞬間からすべての業務が止まるとは限りません。ノートパソコンであれば内蔵バッテリーで一定時間使用できますし、スマートフォンもバッテリーが残っていれば連絡手段として利用できます。
一方で、デスクトップパソコン、ルーター、Wi-Fi機器、電話設備、サーバー、照明などは、電源が失われると使用できなくなる可能性があります。
つまり重要なのは「会社全体で何時間もつか」ではなく、「重要な業務を何時間維持する必要があるか」という視点です。
中小企業庁のBCP指針でも、電力・ガス・水道など、事業継続に必要なライフラインについて代替手段を検討することが示されています。
例えば、こんな業務を優先する
停電時にすべての電気設備を動かそうとすると、必要な電源容量が大きくなり、コストも増えてしまいます。
そこで、まずは「停電しても止められないもの」を整理します。
- パソコン・業務端末
- インターネット回線・Wi-Fi
- 電話・通信設備
- サーバー・ネットワーク機器
- 防犯設備・監視カメラ
- 非常灯・最低限の照明
- 空調・換気設備
- 電子錠・入退室管理システム
- 重要設備・製造設備
業界や企業によって必要な設備は異なります。だからこそ、非常用電源を導入する前に「停電時に何を残すのか」を決めることが重要です。
2 企業にとって「72時間」は絶対に必要?
防災対策について調べていると、「72時間」という数字を目にすることがあります。しかし、企業の非常用電源について、すべての会社が一律に72時間分の電力を確保しなければならない、という意味ではありません。重要なのは、自社の事業内容や立地、災害リスク、復旧までの想定時間などを踏まえて、必要な電力をどの程度の時間確保するのかをBCPの中で決めることです。
- 2~4時間程度
停電直後の最低限の業務継続や安全確保を目的とする。 - 8~12時間程度
勤務時間中に発生した停電に対し、業務を一定時間維持する。 - 24時間程度
長時間停電を想定し、重要業務や通信手段を維持する。 - 72時間程度
大規模災害によってライフラインの復旧が長期化するケースを想定する。
というように、段階的に考えることができます。
大切なのは「何時間あれば安心か」ではなく「自社は何時間の事業継続を目標とするのか」を決めることです。
3 非常用電源にはどんな種類がある?
企業が停電対策として利用できる主な電源には、いくつかの種類があります。
ポータブル電源・蓄電池
バッテリーに電力を蓄えておき、停電時に必要な機器へ電力を供給します。比較的導入しやすく、オフィスのパソコンや通信機器、照明などの電源として活用できます。燃料を必要としないタイプであれば、燃料の保管・補給を考える必要がないこともメリットです。
UPS(無停電電源装置)
UPSは、停電などで電源が失われた際に、接続している機器へ一時的に電力を供給する装置です。特にサーバーやネットワーク機器など、突然電源が切れるとデータ損失や機器トラブルにつながる設備には重要です。UPSは「長時間の電力供給」というより、停電直後の電源断を防ぎ、安全にシャットダウンしたり、別の電源へ切り替えたりするための設備と考えると分かりやすいでしょう。中小企業庁も、重要な情報システムについて非常用電源や回線の二重化を検討することを事前対策の一つとして挙げています。
非常用発電機
燃料を使って発電する発電機です。絶対に電力を切らせることがてきない病院などで利用されることが多く、大容量の電力を比較的長時間供給できることがメリットですが、燃料の保管・調達や定期的なメンテナンス、設置場所、排気・騒音なども考慮する必要があります。そのため、導入する場合は「発電機があれば安心」と考えるのではなく、燃料や保守を含めた運用計画が必要です。
4 非常用電源は「容量」だけで選ばない
非常用電源を選ぶ際「○○Whだから○時間使える」といった容量だけを見てしまうケースがあります。しかし、実際の使用時間は、接続する機器の消費電力によって変わります。
基本的な考え方は、
使用可能時間 ≒ 電源容量(Wh)÷ 使用電力(W)
です。
例えば1,000Whの蓄電池に合計100Wの機器を接続した場合、理論上は約10時間分の電力となります。ただし、実際には変換ロスなどがあるため、理論値どおりの時間使えるとは限りません。他にもパソコンなどは常に一定の電力を消費するわけではありません。
そのため「何Wh必要か」ではなく「何を何時間動かしたいか」から逆算することが重要です。
5 企業が非常用電源を選ぶときの5つのポイント
① 停電時に必要な機器を洗い出す
停電した際に使用する機器をリストアップします。
- パソコン
- モニター
- ルーター
- ONU
- Wi-Fi
- 電話
- サーバー
- 照明
- 防犯設備
すべての機器を動かす必要があるとは限りません。「止めてはいけない設備」と「停電時には停止してもよい設備」を分けましょう。
② 必要な電力容量を計算する
次に、それぞれの機器の消費電力を確認します。
例えば以下のように、必要な電力を算出します。
| 機器 | 容量 | 台数 | 小計 |
|---|---|---|---|
| パソコン | 50W | 5台 | 250W |
| 通信機器 | 50W | 1台 | 50W |
| 照明 | 100W | 2台 | 200W |
| 合計 | 500W | ||
さらに「この設備を何時間維持したいのか」を掛け合わせることで、必要な電力量を検討できます。
③ 電源の出力も確認する
容量だけでなく、電源の「出力」も重要です。
例えば、蓄電池の容量が大きくても、出力が小さければ必要な機器を同時に動かせない場合があります。特に、起動時に大きな電力を必要とする機器を接続する場合は注意が必要です。
④ 設置場所と運用方法を決める
非常用電源は、購入して置いておくだけでは十分ではありません。停電したとき、
「誰が取り出すのか」
「どこに接続するのか」
「どの機器を優先するのか」
「充電状態をどう管理するのか」
まで決めておきましょう。
BCPは計画を作るだけでなく、教育・訓練や定期的な見直しまで含めて運用することが重要です。
⑤ 定期的に点検する
非常用電源は「災害が起きたときに使えればいい」というものではありません。
- バッテリーが劣化している
- 充電されていない
- ケーブルがない
- 接続方法が分からない
- 必要な機器を動かせない
など、いざというときに上記の状態では意味がありません。定期的に動作確認を行い、実際の停電を想定した訓練を行うことが重要です。
6 「会社全体を動かす」のではなく
「重要業務を止めない」
非常用電源を検討するときにありがちな失敗が「オフィス全体を通常どおり動かそう」とすることです。
例えば、停電中もすべての照明、空調、パソコン、複合機、給湯設備などを使おうとすると、必要な電源容量は大きくなります。一方で、BCPの観点では「最低限の電力で重要業務を継続する」という考え方が重要です。
内閣府のBCPの考え方でも、災害時には重要業務を中断させない、または中断した場合でも目標復旧時間内に再開することが重視されています。つまり、非常用電源は「普段と同じ状態を維持するための電源」ではなく「会社にとって重要な機能を維持するための電源」と考えることがポイントです。
7 「停電=業務停止」にしないために
停電が発生すると、電気だけでなく、インターネットや電話、空調、照明など、さまざまな設備に影響が及ぶ可能性があります。そのため企業の停電対策では、非常用電源だけを見るのではなく、
電力+通信+情報+人員
をセットで考える必要があります。
例えば以下のような対策です。
- 非常用電源を確保する
- Wi-Fi・通信機器の電源を確保する
- 重要データをバックアップする
- 従業員の安否確認手段を用意する
- 停電時の業務手順を決める
- テレワークなど代替勤務を検討する
- 定期的に訓練する
中小企業庁も、重要な業務に必要な電力や通信などのインフラについて、代替手段を事前に検討することを推奨しています。
8 非常用電源は「購入」だけが選択肢ではない
非常用電源を導入するときに問題になりやすいのが、初期費用と管理負担です。
特に企業では、
「購入費用が高い」
「使わない期間が長い」
「バッテリーの状態を管理できない」
「数年後の交換費用が心配」
といった課題があります。
そこで近年は、蓄電池などの防災設備をサブスク・レンタルで導入する方法も選択肢の一つになっています。サブスク型であれば、初期コストを抑えながら非常用電源を導入し、契約内容によっては機器の交換やメンテナンスなどを含めて管理負担を軽減できる場合があります。特に「防災対策は必要だが、一度に大きな予算を確保するのが難しい」という中小企業にとって、検討しやすい方法です。ただし、サービスによって契約期間やメンテナンス内容、交換条件などが異なるため、導入時には内容を確認することが大切です。
9 企業の停電対策は
「何時間もつか」を見える化する
ここまで見てきたように、企業の停電対策で重要なのは「非常用電源を持っているか」だけではありません。重要なのは「停電した場合、どの設備を、何時間、動かせるのか」を把握していることです。
例えば、
パソコン5台+Wi-Fi+電話+最低限の照明を8時間維持する
という目標を決めれば、必要な電力容量も具体的に検討できます。
反対に、目標が決まっていない状態で「大容量の蓄電池を買っておけば安心」と考えると、必要以上のコストをかけてしまう可能性があります。
まずは、自社の重要業務と必要な電力を整理することから始めましょう。
10 まとめ|
停電対策は「何時間もつか」から考える
災害による停電は、いつ発生するか分かりません。そして、停電が数時間で復旧するとは限りません。だからこそ企業には「停電しても重要業務を止めないための準備」が必要です。
非常用電源を検討するときは、以下の順番で考えると、無駄のない停電対策を進めやすくなります。
- 停電時に必要な設備を洗い出す
- 優先して動かす設備を決める
- 必要な消費電力を計算する
- 何時間維持するかを決める
- 蓄電池・UPS・発電機などから適切な電源を選ぶ
- 定期的に点検・訓練する
「うちの会社は停電したら何時間もつだろう?」
まずは、この問いから始めてみてはいかがでしょうか。非常用電源は、単なる防災用品ではありません。災害時にも事業を継続するための、BCPの重要なインフラです。企業の防災対策では、電力・通信・情報などの代替手段をあらかじめ検討しておくことが重要とされています。



