防災備蓄の予算はいくら必要?
企業規模別の考え方
防災担当者になったばかりの方や、これから防災備蓄を見直す企業にとって、予算設定は悩みやすいポイントです。防災備蓄の予算は、単純に従業員数だけで決めるのではなく、何日分を備えるのか、何を備えるのか、停電時の電源まで用意するのかによって大きく変わります。
国の「事業所における帰宅困難者等対策ガイドライン」では、発災後3日間の従業員等の待機を想定し、備蓄量の目安として、1人あたり水9L、食料9食、毛布1枚などが示されています。さらに、来社中の顧客・取引先などを考慮し、10%程度余分に備蓄することも検討されています。
そこで今回は、10名以下、30名、50名、100名、500名規模の企業を例に、企業防災に必要な備蓄予算の考え方を解説します。
目次
1 企業の防災備蓄は「1人あたり」で
考えると分かりやすい
予算の考え方ですが、会社全体を考える前に1人あたりいくら必要なのかを考えると、予算を設定しやすくなります。
例えば、最低限の3日分の備蓄を整える場合、次のような費用を想定できます。
| 備蓄品 | 1人あたりの予算目安 |
|---|---|
| 保存水 | 500~1,000円 |
| 非常食 | 2,000~4,000円 |
| 簡易トイレ | 500~1,500円 |
| ブランケット・防寒用品 | 500~1,500円 |
| 衛生用品・生活用品 | 500~1,500円 |
| 合計 | 4,000~9,500円程度 |
※上記は企業が予算を検討するための概算です。商品、数量、保存期間、購入方法などによって価格は変動します。
実際には、これに救急用品、ヘルメット、懐中電灯、ランタン、情報収集機器、非常用電源などを加えるケースがあります。そのため、企業の防災備蓄予算としては、まず「1人あたり5,000~10,000円程度」をひとつの初期予算の目安として考え、必要な設備まで含める場合は、さらに上乗せしていく方法が分かりやすいでしょう。
2 企業規模別・防災備蓄の予算目安
ここでは、3日分の基本的な防災備蓄を中心に、企業規模別の予算を考えてみます。
10名以下の企業なら「5万~10万円」がひとつの目安
従業員10名の企業の場合、
5,000~10,000円×10名=5万~10万円
程度が、基本的な3日分の備蓄を整える際の予算目安になります。
具体的には、以下の物を一通り揃えます。
- 保存水
- 非常食
- 簡易トイレ
- ブランケット
- 衛生用品
- ランタン・懐中電灯
- 救急用品
小規模企業の場合は、人数が少ない分、比較的少ない予算からスタートできます。一方で、10名程度の企業では「人数が少ないから防災対策は不要」と考えてしまいがちです。実際には、少人数の企業ほど、一人が欠けた場合の業務への影響が大きくなる可能性があります。まずは10万円以内を目標に、3日分の基本備蓄を整えるところから始めるとよいでしょう。
30名規模なら「15万~30万円」
従業員30名の場合は、
5,000~10,000円×30名=15万~30万円
程度が基本的な予算の目安です。
30名規模になると、備蓄品を段ボール単位で購入するケースも増えてきます。特に重要なのが、保管場所と在庫管理です。30名分の水や食料をまとめて保管すると、それなりのスペースが必要になり、分散して保管も検討する必要があります。
- 倉庫
- キャビネット
- 各フロア
- 防災備蓄スペース
東京都も、事業所における防災備蓄の事例として、備蓄品を複数箇所に分けて保管する取り組みなどを推奨しています。
50名規模なら「25万~50万円」
従業員50名の場合は、
5,000~10,000円×50名=25万~50万円
程度が基本的な予算目安になります。50名規模になると「水と食料だけ」という備蓄から、より実践的な防災対策へ進めることをおすすめします。
- 非常用電源
- モバイルバッテリー
- LEDランタン
- 救急セット
- 簡易トイレ
- 衛生用品
- 防災ヘルメット
- 情報収集用ラジオ
特に停電が発生すると、パソコンやスマートフォン、通信機器などが使えなくなる可能性があります。そのため「食べるための備蓄」だけでなく「情報を得るための電源」も考えておくことが重要です。
100名規模なら「50万~100万円」
従業員100名の場合は、
5,000~10,000円×100名=50万~100万円
が基本的な3日分の備蓄予算の目安になります。100名規模では、単純に人数分を購入するだけではなく、災害発生時の運用まで考える必要があります。
飲料水は、1人あたり9Lの備蓄を考えると、100名分は900Lになります。食料も、1人あたり9食分の備蓄なら900食がひとつの基準になります。
さらに、来客や取引先などを考慮して余裕を持たせることも必要です。国のガイドラインでは、外部の帰宅困難者に備えて10%程度余分に備蓄することも示されています。つまり100名の企業なら、単純に100名分ではなく、110名分程度を想定するという考え方もできます。
そのため100名規模では「どこに、何を、何人分保管しているのか」を管理できる仕組みも重要です。
500名規模なら「250万~500万円」が基本ライン
従業員500名の場合は、
5,000~10,000円×500名=250万~500万円
程度が基本的な3日分の備蓄予算の目安になります。500名規模になると、防災備蓄は単なる「非常食の購入」ではなく、企業のBCP対策の一部として考える必要があります。なぜなら、以下の項目も間得る必要があるからです。
- 3日分の保存水・非常食
- 簡易トイレ
- 防寒用品
- 救急用品
- 衛生用品
- 非常用照明
- 通信手段
- 非常用電源
- 防災備蓄倉庫
- 備蓄品管理システム
- 備蓄品の定期更新
そのため、500名規模では「1人あたり1万円」という単純な計算だけで予算を決めるのではなく、設備費・保管費・更新費用まで含めた年間の防災予算として考えることが重要です。
企業規模別の予算目安まとめ
ここまでの内容をまとめると、次のようになります。
| 企業規模 | 基本備蓄の予算目安 | 備蓄の内容 |
|---|---|---|
| ~10名 | 5万~10万円 | 保存水や非常食など 防災用品を確保 |
| 30名 | 15万~30万円 | 倉庫などの防災用品の 保存場所を確保 |
50名 | 25万~50万円 | 非常用電源などの 防災対策用品を確保 |
100名 | 50万~100万円 | 社外の方にも対応できる 余裕のある備蓄 |
500名 | 250万~500万円 | BCP対策の一部として検討 |
※3日分の基本的な備蓄を想定した概算です。業種で非常用電源など必要な備品が異なるため、あくまで目安としてご検討ください。
3 予算を決めるときは
「人数×単価」だけでは不十分
企業の防災予算を考える際、従業員数は重要な基準ですが、それだけでは十分ではありません。特に次の5つを確認しましょう。
1.何日分を備蓄するのか
一番初めに決めたいのが備蓄日数です。国のガイドラインでは、発災後3日間の待機を想定した備蓄が目安とされています。一方で、災害の長期化を考慮し、3日分以上の備蓄についても検討することが示されています。企業によっては、3日分を基本としながら、重要拠点については5日分、7日分とするなど、拠点の重要性に応じて設定する方法もあります。
2.誰の分まで備えるのか
従業員だけでなく、以下の対応をどう扱うかも事前に決めておく必要があります。
- 来客
- 取引先
- 派遣社員
- アルバイト
- 清掃・警備などのスタッフ
特に来客が多いオフィスや店舗、工場などでは、従業員数だけで必要数量を決めると不足する可能性があります。
3.停電対策をどうするのか
防災備蓄というと、保存水や非常食に目が向きがちです。しかし、災害時には停電によって、以下の機器などが使えなくなる可能性があります。
- パソコン
- スマートフォン
- Wi-Fiルーター
- 電話
- 照明
- セキュリティ設備
そこで、蓄電池やポータブル電源などの非常用電源も予算に含めるか検討しましょう。「従業員の生命を守る備蓄」と「事業を止めないためのBCP対策」は、分けて予算を考えると整理しやすくなります。
4.備蓄品の更新費用を考える
防災備蓄は、一度購入すれば終わりではありません。保存水や非常食には賞味期限があり、乾電池や衛生用品なども定期的な確認が必要です。そのため、
初年度予算+毎年の更新予算
という考え方がおすすめです。例えば初年度に100万円を使った場合でも、翌年以降は「何も買わない」のではなく、賞味期限や在庫数量を確認しながら計画的に入れ替えていきます。
5.保管・管理コストも忘れない
従業員数が増えるほど、備蓄品の保管スペースも必要になります。特に500名規模になると、大量の保存水や数千食の非常食、簡易トイレなどを保管する必要があります。そのため、
購入費+保管費+管理費+更新費
まで含めて、防災予算を考えることが重要です。
4 防災備蓄は「一度に全部買う」必要はない
「100万円必要だから、今年は防災対策ができない」と考える必要はありません。むしろ、優先順位をつけて段階的に整備する方法がおすすめです。
STEP1:3日分の基本備蓄
最初に災害発生直後に必要となる以下のものを揃えます。
- 保存水
- 非常食
- 簡易トイレ
- ブランケット
- 衛生用品
STEP2:電源・照明を整備
次に情報収集で必要な電源の確保や、照明を揃えます。
- 蓄電池
- ポータブル電源
- モバイルバッテリー
- LED照明
- ラジオ
STEP3:BCP対策へ広げる
最後に事業継続を意識した対策へ広げていきます。
- 重要設備の電源確保
- 通信手段の確保
- データ・システム対策
- 防災訓練
- 代替拠点
- サプライチェーン対策
5 「防災備蓄費」と「BCP費」を分けて考える
企業の防災予算を検討するときは、次のように分けると分かりやすくなります。
① 従業員を守るための防災備蓄
水、食料、簡易トイレ、毛布、衛生用品など。
② 災害時に会社を維持するためのBCP対策
蓄電池、非常用電源、通信機器、データバックアップ、非常用照明など。
この2つを一緒にしてしまうと「防災備蓄にいくら必要なのか」が分かりにくくなります。まずは従業員1人あたり5,000~10,000円程度を基本的な備蓄費用の目安として考え、そこに企業ごとのBCP対策費用を追加していくと、予算を組みやすくなります。
6 まとめ|防災備蓄の予算は
「人数×必要な備え」で決める
企業の防災備蓄に必要な予算は、企業規模によって大きく異なります。ただし、最初から完璧な防災体制を作る必要はありません。
まずは、
「従業員1人あたり5,000~10,000円」
を基本的な3日分の備蓄予算の目安として、全体予算を試算してみましょう。そのうえで、非常用電源や照明、通信設備などのBCP対策を追加していきます。
重要なのは「いくら使うか」ではなく「災害が発生したときに何が必要なのか」を先に決めることです。
防災備蓄は、災害が起きてから買い足すことができません。企業規模やオフィス環境、従業員の勤務状況などを踏まえて、今のうちから必要な備蓄量と予算を決めておきましょう。
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